京都市左京区での店舗改装
Vegan&Gluten Free Mushiyashinaiむしやしない店舗改装工事のレポートです。
住宅の新築や改装だけでなく、店舗の改装もときどき行っています。
今回は台湾在住のデザイナー設計のもと、施工監理を請け負いました。
16年前に一乗寺で開店された『むしやしない』さん。
内装はオーナーさん自らも手を加えられたりしたとても居心地のいい空間ですが
新しい形態の店舗を目指して、改装していきます。
改装工事は撤去解体工事から始まります。
什器や家具の運び出しを終えたら、床、壁の内装材の解体がどんどん進んでいきます。
16年の歴史に敬意を払いながら新生むしやしないがどんな空間になるか楽しみです。
今回の改装では動線を変更するので、既存の壁を撤去したり、壁を新設したりします。
新しい壁の仕上げが何になるかを考えながら、床や天井との取り合いを想定しながら
工事を進めていきます。
新しいレジコーナーは、ショーケースをなくしてシンプルにカウンターと作業台のみとしますので
必要なスペースを確保して新しい壁を造設していきます。
もとショーケース奥のスタッフコーナーから厨房の様子が眺められた窓も
新しく通路部分になるので、開口部をなくして閉じました。
また客席部分の奥の壁はアイストップにもなり、
こだわりの板貼り仕上げとしますので、RCの壁に下地を組んでいます。
新しい壁が立ち上がってくると、気分も一新、わくわく感が出てきます。
改装では建物の大きさが決まっているので家具の配置を慎重に検討する必要があります。
エントランスには、お客様の目を惹く三日月型のディスプレイ用の展示台を設置します。
図面では分かりにくい曲線の雰囲気をイメージしていただけるよう、原寸サイズを製作しました。
全長約3mもある台ですので、配置によって通路が狭くなったりします。
少しずつずらしながら配置検討し、また迫力が損なわれないよう3m10cm程度にすることが決まりました。
厨房も同様に既存の機器と新しく購入される機器が共存しますので
通路と作業スペースを確保しながら配置を検討しました。
厨房機器は特に電気配線との絡みが多いので、出来る限り配線が目につかないよう
2本の配管シャフトを柱のようにたてることで、スッキリ見せることにしました。
シャフト位置は簡単に変更が効かないので、機器の大きさを床にテープ貼りしながら
お客様と厨房機器業者さん立会いのもと、詳細に打合せをして無事配置が決まりました。
厨房はスタッフが長時間作業する空間になりますので、
居心地よく効率よく作業できるよう心がけます。
もとの床はモルタルが剥がれたり、不陸があったりしていてお客様もなんとかしたい、
とかなりお困りのようでしたので試行錯誤のうえ研磨掛けをした後、
モルタル薄塗りを施し、防塵塗装をかけました。
また、もとの厨房の壁はタイルやRC壁、塗装の壁が混在していましたので
客席から見える部分はキッチンパネル貼りとしました。
また塗装の部分も劣化があったので塗装しなおしました。
生まれ変わった厨房は、塗装を塗り直した壁と天井、落ち着いた木目柄をパネルとした壁、
防塵塗装をかけて艶やかで平らな床となりました。
フードは既存のもののままですが、他の箇所の仕上げが一新されたことで
見栄えも新たに、気持ちよく調理してもらえるのではないでしょうか。
改装前の店内の壁はお客様が自らコテ塗りされたもの、
その風合いを改装後も活かすことにして、左官やさんに新しい壁を塗ってもらいます。
遠くから見て新旧の壁がうまく馴染むように、塗りむらをつけてます。
店内の床はもともと木製タイルが全面に貼ってありましたが、
改装後は全面左官タタキ仕上げとしました。
塗り厚が30㎜以下でしたので大きな石は使えなかったのですが
小粒な石が散らばってお上品な感じの仕上がりとなりました。
デザイナーが床でこだわったのは、紅葉の葉っぱの型抜き!
紅葉シーズンは紅葉狩りに訪れる人も多いので、店内にそのイメージを反映させました。
紅葉の型の試作を何度もして、パッと見て紅葉と分かってもらえる単純な形を採用~
乾いたところで型抜きすると、床に紅葉の葉がハラハラと散らばりました。
いかがでしょうか。秋の一乗寺にぜひお越し下さいませ。
改装前も改装後も木材の仕上げがありますので、塗り直したり新たに塗ったり...
塗装工事は、見栄えを左右する大事な工事となります。
店内には、木製の家具、既存の建具、新しい枠等、木材があちこちに使われています。
基本的には既存建具の色、新しい家具に使った木材のなるべく自然に近い色、
この2色を基本にして塗分けました。
このL字型の家具も素地のままと塗装後で見栄えが変わります。
もとの塀は木製で風雨にさらされていたので少し朽ちている部分もあり、
単色で塗装されていてのっぺりとした印象でした。
今回工事ではデザイナーの意向で4色のグラデーションに塗分けをしました。
なるべく木目を消さずに塗分けたいという要望でしたが、既存色があるため薄色の再現が難しく
上部のクリーム色は塗りつぶしとして薄色の再現を優先しました。
グラデーションにしたことで印象ががらっとかわり、表情豊かな塀に生まれ変わりました。
今回の改装は工期が短く関連工事が多々あり、
可動式の家具2台は、大工さんに出張してもらい別の場所で組み立ててもらいました。
その間も現場は塗装したり、電気配線したり...休むことなく大忙し!
本日は、ようやく一通りの工事が終わった現場へ、家具を搬入する日です。
全長3m以上ある展示台と、どっしりとしたレジ台が仲間入りしました。
どちらも高さが1mあるのでトラックから下ろすのも5人がかり!
皆さん、声かけをしながら息を合わせて、無事ようやく店内へ。
おおよその位置に下ろしたら、配置の微調整。
特に三日月型の展示台は、長いので少し角度を変えるだけで廻りの通路幅が変わります。
原寸図面で検討したときと同様に、4方向の空きに留意しながら場所を決めました。
搬入完了した家具たち。今回製作した4台の大型家具が一同に揃いました。
整形の空間に曲線の家具を招き入れたことで、躍動感や期待感がもたらされました。
約1か月半の工事期間を経て、ついに新しい店舗内装が完成しました。
各種工事を進めて慌ただしかったのが噓のように、整然と静かな店内です。
ブラインドや照明が設置され、一部家具も入って、開店準備に向かいます。
厨房も一足先に機器が搬入されて、スタッフの方が調理器具や備品を搬入していこうというところ...
準備にも熱が入り、拍車がかかります。
当初のショーケースのレジ台とはうって変わったレジ台。
三日月型の展示台にケーキのディスプレイ+番号を並べるのでレジでのやり取りは単純化します。
そのためレジ台はスッキリ、シンプルとなりました。
後ろの棚に各季節のディスプレイが並び、お客様がお菓子を購入される姿が目に浮かびます。
リニューアルオープンの日が待ち遠しいですね。
~番外編~
京都府では府内産木材として、指定業者から購入した場合認証書が発行される木材があります。
今回の改装で製作した家具は大半を府内産木材をとすることで
『ひろがる京の木整備事業』の補助金対象となりました。
本日は木材を使用した家具を確かに製作したか、そして納品したかの検査日です。
事業の主旨としては多くの府民が集う民間施設において、府内産木材を利用することで
森林資源の循環利用や地球温暖化の防止に役立てるものです。
お客様がこの主旨に賛同され、ぜひ府内産木材を使いたいというご意向があり
府内産木材をふんだんに使った家具を4台、製作したので確認いただきました。
当初の計画から、家具の内容についてはベンチや天井装飾や...と色々検討しましたが
結果としては府内産木材である杉および桧で板張りした、統一感のある展示台が4台となり
十分に府民の方々にPR出来る家具となりました。